FRBのシグナルを察知する 声明・発言の変化がカギ

米国の中央銀行、米連邦準備理事会(FRB)が、いよいよ12月に政策金利引き上げを始めるのではないか。 世界の投資家の関心が集まっている。 約7年間も事実上のゼロだった金利が引き上げられれば、影響は大きい。 本当に利上げがあるのかを占う際に、何を見ておくべきか。 FRBのシグナルを知る図表 米金融政策を決めるのは原則年8回開く米連邦公開市場委員会(FOMC、当面の日程は表A)だ。 その10月28日の会合後に出た声明が注目を集めた。 1回前の9月会合の声明にあったグローバルな経済・金融動向への懸念を示す文章が消えたからだ(表B)。 中国発の混乱の影響を重視する文章は「年内利上げが難しくなった」との見方が広がる要因になっていた。 文章の削除は次の12月会合での利上げ決定もあるかもしれないとの警告だ――。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのFRB担当記者、ジョン・ヒルゼンラス氏は書いた。

12月の会合、重み

12月というタイミングが重みを持つのは、それを逃すと、利上げの是非を判断できる機会が来春まで先送りされる可能性もあるからだ。 なぜか。 ゼロ金利解除のような重要な政策変更は、経済見通し公表やFRB議長の記者会見があるFOMC(年4回)で決めるのが普通だとみられており、該当するのが12月の次は来年3月会合になるのだ。 そうなると、秋の大統領選挙に近づき金融政策の自由度が下がる恐れもある。   では、本当に12月に利上げがあるかどうかを占うにはどうすればいいか。 FRBが示すヒントをうまく読み取ることだ。まず熟読すべきなのがFOMCの声明や議事要旨(原則3週間後に公表)だ。   表Bでは9月と10月の声明を比べた。 明確に下方修正されたのが労働市場の評価であることがわかる。 8、9月の雇用統計で非農業部門の就業者増加数が「雇用回復」の目安となる20万人を大幅に下回ったからだ。 FRBは法律により「物価の安定」だけでなく「雇用の最大化」にも責任を負うとされている。 しかも、FRB議長のイエレン氏は雇用を重視する労働経済学者。 労働市場改善の有無が今後の政策を左右することは間違いない。   となると焦点は今後出る雇用統計だ。 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のFRB担当、サム・フレミング記者も、12月のFOMC前に公表される2回の雇用統計(10、11月分、それぞれ翌月上旬に発表)が重みを持つと書いた。 非農業部門の就業者増加数が20万人以上になるなど改善が確認できれば利上げを決めやすい。   「雇用以外では消費、住宅、設備投資関連の指標も重要で、データが想定を明確に下回るならFRBは利上げ回避に動く」(米金融情報コンサルタント会社、オブザーバトリー・グループ)。 上述した通り、10月のFOMC声明からグローバルな経済・金融動向への懸念を示す文章が消えた。 ただその動向を「注視している」とも記しており、深刻な市場混乱が再燃した場合も利上げに逆風が吹く。   FOMCメンバーの発言にも注目したい。 FTのフレミング記者は12月2日のイエレン議長の講演が重要と書いた。 議長は3日にも議会で証言する。議長以外の講演などにも注意が必要だ。 市場が「要注意人物」と見なすのは、FRB内で早期利上げに慎重な発言をしてきたブレイナード、タルーロの両理事。口ぶりが変わるようなら利上げに追い風が吹くだろう。   ちなみに、いまFOMCで投票権を持つのは10人。 内訳はFRBの5人(議長、副議長、3人の理事)とニューヨーク連邦準備銀行総裁、さらにその他の地区連銀総裁4人だ。 この4人分はニューヨーク以外の地区連銀総裁が毎年持ち回りで担当する。

株価下落の恐れも

仮に12月に利上げが始まれば何が起きるか。 普通は金利面で魅力が増すドルが買われ円安が進みやすい。 日本の輸出企業の収益を押し上げ株価上昇も期待できる。 一方で輸入コストが上がり食料品などの値上げがさらに進むかもしれない。   逆の展開の可能性もある。 市場参加者が利上げを時期尚早と受け止めると、ショックが広がり世界の株価が下落する恐れがある。 リスク回避ムードが強まれば「安全通貨」と目されている円の相場は上がりやすい。 金利が高くなった米国に新興国から資金が流出すれば、新興国経済がさらに減速しかねない。 輸出減などで日本にも悪影響が及ぶ。   米利上げ開始が混乱を招いた前例もある。 1995年4月に円相場が当時としての戦後最高値1ドル=79円75銭に急騰、日本経済にショックを与えた。 円高の一因は米金融政策の転換だった。 FRBは政策金利が3%だった94年2月に利上げを開始。 1年後に6%とした。 米国への資金流出でメキシコの通貨危機が発生。 地理的に近い米経済への見方も悪化して、ドル安圧力を生んだ。   こうしたショックを避けるため、FRBは仮に12月に金利を上げても、その後の利上げペースは緩やかになるというシグナルを発する可能性がある。 グラフCはFOMCで年4回作る「適切な政策金利」の見通し。 16年末の水準は6月会合から9月会合にかけて下げられた。 12月にさらに下がるなら、今後の利上げペースをかなり緩やかなものにするという示唆だろう。

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