危険性を孕むマイナス金利がスタート 【パート2】

いよいよ明日2月16日よりマイナス金利が施行されます。
前回パート1ではマイナス金利とは何か、導入決定の背景、その効果などに的を絞って論説いたしましたが、パート2ではマイナス金利導入決定以降の金融市場の現状、今後の日本経済に与えうるリスクについて論じます。

マイナス金利決定以降の金融市場の混乱

リスクオフによる日本株と中国株の大幅下落

日銀のマイナス金利導入決定は、世界の金融市場に負のインパクトを与えてしまいました。日銀のマイナス金利決定以降、世界の金融市場で日本株と中国株の下落が顕著となっています。
資本流出問題を抱える中国株とともに先週末には日経平均構成銘柄のうち約4割が2013年4月の日銀の異次元緩和前の水準に逆戻りしてしまいました。

日銀のマイナス金利のアナウンスがあったのが1月29日、同27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のイエレンFRB議長による米国の景気減速懸念発言と重なって金融市場混乱の震源地となったのは事実です。
実際に世界のけん引役として期待された米国景気の減速懸念も強まり、投資家が安全資産である金や日本円に殺到し、投資家のリスク回避姿勢と急速な円高が日本株の重荷になっています。

日本株が下げ幅を広げた大きなきっかけは、中国株の急落だけではなく、日銀のマイナス金利決定直後から大幅な下落が始まっています。世界の投資家はリスク資産の代表格である株式から資金を引き揚げており、年初から米国株は8%、欧州株は15%下落しています。日経平均は年初来下落率21%と、景気後退や政策への不信感が強まる中国の上海株(22%)と並ぶ極端さです。
マイナス金利による金融機関の収益性悪化懸念、円高進行による輸出型企業の業績悪化の懸念も背景となっているのは確かであり、日経平均の株価純資産倍率(PBR)が解散価値に値する1.0倍を切ってしまっているありさまです。

リスクオフによる金と日本円の急上昇

一方、安全資産の代表格である金が買われて上昇率は17%と主要資産で最も大きく、同時に通貨では流動性が高く安全資産とみなされている日本円が買われています。通貨の実力を示す実効為替レート(日経通貨インデックス)(用語解説あり)で円の年初来上昇率は8%と、主要通貨に対し最大となっています。

円上昇の背景には、世界的な株式市場の低迷と米国景気への不安があります。日経平均に関して言えば、マイナス金利による日本企業の業績悪化懸念と世界経済の下支え役として米国は力不足との懸念が浮上し、利上げペースが緩やかになるとの観測が強まっていることが原因となっています。

金融市場では日銀のマイナス金利導入が「市場の不安を鎮められず、逆に緩和策の限界を意識させてしまった」との声が多くなっています。マイナス金利導入決定が市場に対してマイナスに作用してしまい、米利上げ観測の後退も重なって円高・ドル安が急速に進み、日本株も急落。年初来の下落率は同じ日数で4割下げた08年のリーマン・ショックに及ばないものの、2000年のIT(情報技術)バブルの崩壊に匹敵する下落ペースとなっているのです。

経済予測の困難さが不安を煽っている

最近の世界経済の混迷の最大の原因は中国を筆頭とする新興国の経済不振だと言われています。世界経済の中で中国など新興国の影響力は2000年以前と比べ桁違いに大きくなっています。世界中の投資家は、その不振がどこで止まり、回復するのかが見えていないのが現在の金融市場の動きに現れているのです。

日本経済の予測も困難となっていることも確かです。なぜならば、従来の経済予測モデルにはマイナス金利が考慮されてないため、その影響を前提に入れた予測は困難を極めるはずだからです。したがって、マイナス金利は市場が最も嫌う不確実性を大きくしてしまったと言えます。市場の期待や予測に基づく変動の粗さを示す日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)(用語解説あり)は、前回の日銀金融政策決定会合があった1月29日の31.72から2月12日は49.84に跳ね上がっているのは、経済予測の難しさを反映している証です。

マイナス金利が与えうる悪影響とはデフレ再燃

世界経済のけん引役は米国から新興国に移り、再びその地位が米国に戻る、というシナリオも昨年までは描くことができましたが、頼みの綱の米国経済にも不安の色が出ています。金融市場では、新興国の調整が続く中で唯一のけん引役である米国経済が失速し、世界が連鎖不況に陥り世界的なデフレに陥るリスクさえも指摘されています。

また、経済理論的に考えてもマイナス金利はデフレ再燃の危険性を秘めていると言えます。資金運用面の理屈では、金利がゼロ未満なら、債券や預貯金などではなく現金を保有した方が有利なので、マイナス幅を広げれば広げるほど現金需要が高まり、金融緩和効果よりも金融引き締め効果の性質を帯びてしまい物価上昇への障害となります。

要するに、世の中の資金は金利がプラスでないと循環しにくく、1月29日に1ドル=121円台だった円相場が、その後一時110円台に上昇したことは、デフレに逆戻りしかねない日本経済の危うさを匂わせていると言えるでしょう。

 

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